子どもがすくすくと成長するために、保育は欠かせない存在です。では、保育は単に子どもを預かる場なのでしょうか? 実は、保育の本質はもっと深いところにあります。それは、「個人と社会の関係性を育む場」であるということです。つまり、子どもが社会の一員として生きていくための力を育てる場所なのです。
保育が「個人と社会の関係性を育む場」である理由
私たちは社会の中で人と関わりながら生きています。そのためには、他人と協力し、相手を思いやる力が必要です。しかし、これらの力は自然に身につくものではありません。幼少期にさまざまな人と関わる経験を通じて培われていきます。
保育園や幼稚園では、年齢の近い子どもや先生、さらには地域の大人たちと触れ合う機会が豊富にあります。こうした環境の中で、子どもたちは社会で生きていくための基本的な力を学んでいきます。
保育の場で育まれる社会性 〜具体的なエピソード〜
① おもちゃの貸し借りで学ぶ思いやり
例えば、ある子がブロック遊びをしているとき、別の子が「貸して」と言ったとします。すぐに貸せる子もいれば、「まだ使っているから貸せない」と思う子もいるでしょう。
そんなとき、少し見守った後に、先生が「〇〇ちゃんも使いたいんだね」と間に入り、「じゃあ、あと少し遊んだら交代しようか」と提案すると、子どもたちは「相手の気持ちを考えながら自分の気持ちを伝えること」や「譲り合うことの大切さ」を学んでいきます。
② 異年齢交流で育つリーダーシップと学び合い
異年齢保育を取り入れている園では、年上の子が年下の子の面倒を見ることがあります。
例えば、お昼ごはんの時間に年長さんが年少さんに「これはこうやって遊ぶんだよ」と教える場面があります。年上の子は教えることでリーダーシップを学び、年下の子はお兄さん・お姉さんの姿を見て学ぶ。このような関わりの中で、「助け合うこと」や「誰かのために動くこと」の大切さを自然と身につけていきます。
③ 地域との交流で広がる世界
最近では、保育園が地域の人々と関わる機会を積極的に作る動きが増えています。例えば、地域のおじいちゃん・おばあちゃんと一緒に畑で野菜を育てる活動をしている園もあります。
子どもたちは、野菜の育て方を学ぶだけでなく、「おじいちゃん・おばあちゃんって優しいな」「たくさんの人に支えられているんだな」と実感します。こうした経験を通じて、世代を超えたつながりを生み、「人と関わることの楽しさ」や「感謝の気持ち」を育てることができます。
保育の可能性をもっと広げるために
「個人と社会の関係を育む場」としての保育の可能性を、さらに広げるためには何ができるでしょうか?
✅ 異年齢交流の機会を増やす
年齢の異なる子ども同士が関わることで、リーダーシップや思いやりの気持ちが自然と育ちます。
✅ 地域の人とのつながりを作る
保育園を地域のコミュニティの場として活用し、大人たちと関わる機会を増やすことで、より広い視野を持つことができます。
✅ 対話を大切にする
子ども同士の話し合いや先生とのやりとりを増やすことで、「自分の気持ちを伝える力」や「相手の話を聞く力」を伸ばすことができます。
まとめ:保育は「共に生きる力」を育む場所
保育の本質は、単に子どもの面倒を見ることではなく、「個人と社会の関係性を育む場」としての役割を果たすことにあります。
異年齢の交流、地域とのつながりなど、さまざまな経験を通じて、子どもたちは社会で生きるための力を身につけていきます。
現代社会では、孤立やコミュニケーション不足が問題となることもあります。しかし、幼少期から他者と関わる力を育むことで、将来的により良い人間関係を築く土台を作ることができます。
私たち大人も、子どもたちが「共に生きる力」を育めるように、環境を整え、支えていくことが大切ですね。