『具体と抽象』という本を読みました。以前から具体と抽象について考えていたことを少し。
私たちは日常生活や仕事の中で、「具体的な情報」と「抽象的な概念」の両方を扱っています。しかし、多くの人はどちらかに偏りがちで、自由に行き来するのが苦手です。例えば、「この商品はなぜ売れるのか?」と聞かれたときに、「広告が上手だから」と答えるだけでは不十分です。その広告がなぜ効果的なのか、さらに深掘りして抽象的な原則を導き出すことで、他の場面でも応用できる知見が得られます。
今回は、具体と抽象を自在に行き来するためのトレーニング方法を紹介します。これを実践すれば、思考の柔軟性が向上し、保育や日常生活での問題解決能力が飛躍的に向上するはずです。
具体と抽象を行き来することの重要性
なぜこのスキルが必要なのか?
具体と抽象を行き来できると、以下のようなメリットがあります。
- 本質を見抜く力がつく
- 具体的な事例に惑わされず、異なる状況でも共通する原則を見出せる。
- 応用力が高まる
- 抽象的なルールを理解することで、別の分野や問題にも適用できるようになる。
- 説明力が向上する
- 相手の理解度に合わせて、具体的に説明したり、抽象的にまとめたりできる。
- 発想力が鍛えられる
- 具体的な事例からアイデアを広げたり、抽象的な概念を現実の課題に適用したりできる。
例えば、マーケティング戦略を考えるとき、単に「この広告は効果的だった」と結論づけるのではなく、「なぜ効果的だったのか?」を抽象化し、他の施策にも応用することすることができます。
具体と抽象を行き来するトレーニング方法
では、具体と抽象を行き来する力を鍛えるには、どのようなトレーニングをすればよいのでしょうか? ここでは、4つの実践的な方法を紹介します。
1. 「なぜ?」を5回繰り返して抽象化する
物事の本質を探るために、「なぜ?」を繰り返して考えることが重要です。これにより、表面的な違いを超えて、共通する根本原則を見つけることができます。
例:「この商品が売れているのはなぜか?」
- なぜ? → 広告がうまくいったから
- なぜ? → ターゲットの心に刺さるメッセージがあったから
- なぜ? → そのメッセージはターゲットの悩みを解決するものだったから
- なぜ? → 人は「悩みを解決してくれるもの」に価値を感じるから
- なぜ? → 人間の本質的な欲求として、「問題を解決したい」という心理があるから
このように、最終的に「人は悩みを解決するものに価値を感じる」という抽象的な原則にたどり着きました。この原則を理解していれば、他のマーケティング施策にも応用できます。
保育園でいうと、なぜ?を繰り返すことでミッションやビジョンなど、保育理念や目標について考えることができます。
2. 「たとえば?」を繰り返して具体化する
抽象的な概念を具体的な事例に落とし込むことで、理解しやすくなります。「たとえば?」を繰り返して、異なる業界や分野でも同じ原則が当てはまるかを考えてみましょう。
例:「人は悩みを解決するものに価値を感じる」
- たとえば? → ダイエットサプリ(痩せたいという悩みを解決)
- ほかには? → 英会話スクール(英語が話せないという悩みを解決)
- もっと違う業界では? → 家事代行サービス(家事が面倒・忙しいという悩みを解決)
このように、「人は悩みを解決するものに価値を感じる」という原則は、さまざまな業界に適用できることがわかります。
実際の保育に保育目標を落とし込んでいくときに、この「たとえば?」が使えます。そこで出た意見をみんなで持ち寄り、対話していくことが大切です。
3. アナロジー思考(類比)を使う
異なる分野の事例を使って共通点を探すことで、思考の幅を広げられます。
例:「企業の組織改革」と「スポーツの戦略」
- サッカーチームがフォーメーションを変えるのと、企業が組織を再編するのは似ている。
- 各ポジション(社員)の役割を最適化することで、チーム(会社)のパフォーマンスが向上する。
こうしたアナロジー思考を活用すると、全く別の業界や分野から新しいヒントを得られるようになります。
この前も園長らと「みんなで保育する」のは、サッカーチームと似ていると話をしていました。組織である以上、他の分野の組織と共通点があるのは当然です。
4. 反転思考で新たな視点を得る
普遍的な法則や成功事例を疑い、逆の視点から考えてみることで、新たな発見が得られます。
例:「売れない商品の共通点を探す」
- 売れない商品はなぜ売れないのか? → ターゲットの悩みに響いていない
- 成功事例の逆は? → 「人は悩みを解決するものに価値を感じる」なら、「悩みがない人には売れない」
このように逆から考えることで、対象を変えたり、アプローチを工夫したりするヒントを得られます。
まとめ:具体と抽象を行き来する力を鍛えよう
具体と抽象を自在に行き来できるようになると、あらゆる状況で本質を見抜き、応用力のある思考ができるようになります。
- 「なぜ?」を繰り返して抽象化
- 「たとえば?」を繰り返して具体化
- アナロジー思考で他分野から学ぶ
- 反転思考で逆の視点を持つ
ビジネス視点で説明してきましたが、保育にも応用は可能。これらのトレーニングを続けることで、保育や日常生活のあらゆる場面で、より深く考え、より良い判断ができるようになるはずです。今日からぜひ実践してみてください!